明日の私も好きでいて

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   ……タイムリープ。  私は頭の中だけで繰り返した。  知っている。タイムスリップとか、タイムトラベルとかいうやつだろう。過去や未来に飛ぶことだ。映画や、漫画の中だけの世界。  優等生であるはずの彼女がそんな突拍子も無いことを言うなんて、どう反応したらいいのか分からなかった。彼女は昨日見せた穏やかな微笑ではなく、子供のようなあどけない表情で笑っている。冗談なのか、本気なのか。  彼女は立ち上がり、備え付けられていたハシゴを降りると、最後の数段分からジャンプして着地した。 「五十六回目」 「え?」 「私のこの話を聞いて、その顔をされたの五十六回目」  その顔。鏡は見ていないが、私は余程ぽかんとしていたのだろう。  風が吹き、彼女のスカートが翻る。昨日までは規律を守っていたはずのその丈の長さが、今日は若干短くなっていた。 「私ね、今日……『十月六日』をもう何回も繰り返してるの」  そう言うと、柚木さんはまたごろんとアスファルトの上に寝転がった。  
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