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私たちはうず高く生クリームが盛られたパンケーキを頼むと、様々な角度から写真を撮った。私はSNSをしてはいなかったが、SNS映えのしそうなかわいい写真が撮れた。
私はアイスクリーム、柚木さんはブルーベリーが付いたものを選んだので、二人でシェアして食べる。口に入れるとなんだか夢見心地な味がして、二人して声にならない声を上げた。
「こういうベタなこと、やってみたかったの」
その言葉に同調する。私もだった。どこにでもいる、普通の女子高校生のようなことをずっとしてみたかった。
……そう、当たり前の、普通のことを。
「真由ってさ、夢ってある?」
食べながら、唐突に聞かれた。
私はフォークの手を止め、ひとしきり考える。
「夢……夢、ね。……柚木さんって今日、ずっと難しい質問をするね」
「それは、あれよ。もう普通の質問は粗方聞いちゃったから。それより、朱莉って呼んでってば」
私は『十月六日』の中で、最低でも五十六回は柚木さんと会っているのだ。私の知らないうちに私のことはいろいろと把握されているようだ。なんだかちょっと怖いような、でも嬉しいような気もした。
「夢……って、職業のこと? まだピンと来ないな。なんかまだ、そんなことまで考えが及ばないっていうか……」
……未来より、今を生きるのが必死過ぎて。
そう思ったが、黙っていた。
柚木さんは首を振る。
「職業じゃなくても。小さなことでもいいよ」
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