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韓栄が吐き棄てた瞬間、韓栄は突然前方に投げ出されそのまま転倒した。彼女の背後を白銀に光る剣が突き抜ける。剣よりも鋭い瞳が、彼女の視界を一瞬よぎった。
「董亮……」
「おい、韓栄大丈夫か!?」
派手に転んだ韓栄を、董亮の同期の副官である朱循が助け起こす。
董亮は眼を爛々と光らせて韓度を睨みつけていた。それを見る韓度は狐につままれたような顔をしている。
「おや、見つかってしまったな」
「彼女の命が目的なら容赦はしないが」
戦闘態勢の董亮に、韓度は嘲るような口調で言う。
「少々脅しただけさ、お前いい身分じゃないか、二匹も虎を飼ってるなんて」
「おいお前なんだ随分なもの言いだな!」
朱循がきいきいと言い返した。
「李国の武官は中々野蛮だな、これは挑み甲斐が有りそうだ。じゃあ韓栄、近い内にまた会うだろう。それまで我が御君主を愉しませる芸の一つでも磨いておけ」
韓度は後ろを向いてその場をゆっくり去った。
「おい待てよ!」
「待って朱循!」
朱循が後ろから斬りかかろうとすると韓栄が叫ぶ。韓栄は血気盛んな朱循を厳しく制した。
「下手に手を出さないで。彼は呂国の最高軍師、私の兄よ」
朱循と董亮はその口を開けた。韓栄は渡し損ねた手紙に目を落とす。
「おい、それあいつに渡すモンだろ?」
韓栄は苦笑する。
「いいわよ、口頭で返事はしたから」
彼女は手紙をその場でビリビリに破いた。
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