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韓栄と別れ兵舎に向かいながら、朱循は董亮に真面目な顔で話しかける。
「しかし、韓度と言ったか、韓栄の兄さんはよっぽど食わせ者なんだな」
董亮が眉間に皺を寄せる。
「韓蓋様の息子だ。凡人じゃない事は頷けるが……韓栄があれ程警戒する理由が気になるな」
朱循は腑に落ちない顔をする。
「え? してねぇだろ。だって自分の方が優秀って言ってたじゃねぇか」
董亮は首を横に振る。
「いや。少し様子がおかしかった。韓栄は敵を前にしている時は、もう少し態度に余裕がある。今日は、強がってはいたが……明らかに動揺していた」
彼女はおよそ自分の味方でない者の前では、素の感情を読まれる事がないよう細心の注意を払う。今日は、韓度の言動一つ一つに表情が反応していた。
朱循は感心したように声を上げる。
「わかるのか?」
「ああ、何となく」
兄がいるという話は聞いた事が無いが、敵国に仕えている故言いたく無かったのだろうか……?
董亮は剣の鞘を強く握り締めた。
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