二章

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韓度は桂都城から帰った後、韓蓋から妹の縁談の話を聞いて耳を疑った。 「父上、韓栄を夏侯家の息子と結婚させる気なのですか?」 「まぁ他にも選択肢はあるが、まず彼と会わせて見ようと思う」 韓蓋は痩せた手で息子から飲み水を受け取る。 「夏侯も悪くはないですが、もっといい家柄はあるでしょう。先先代からの重臣の士季(しき)様の家や、丞相の張明(ちょうめい)様の家なども選べるはずです」 「家柄は確かに良いが……私はそれ程家の繁栄に興味が無いからな」 韓蓋は鷹揚に笑う。 「夏侯家を選んだ理由はな、あそこは代々武系の家柄だから、韓栄と相性が良いと思ったんだ」 「相性……?」 韓度は怪訝な顔で訊き返す。 「夏侯家は親戚にも将軍や軍師が多い。韓栄の才を刺激し得る可能性がある」 「韓栄の才? 父上、まさか韓栄を官人にしようとしてるのですか?」 「……それは楊彪様次第だな」 「女は官人になれませんよ!」 「前例が無いだけだろう。韓栄はその辺の男の軍師よりも頭が切れる」 「何を言って……!」 「韓度、お前達兄妹は確かに仲が悪いが、余程韓栄に官人になって欲しくない様だな」 韓度は父の言葉で我に返り平静を取り繕った。 「いいえ、ただ官人は命の危険と隣合わせだから女性には難しいでしょう」 「それは一理あるが、兵として戦うのではないからあまり変わらんだろう」 「それはそうですが……」 韓度は部屋を出て聞こえないように一人悪態をついた。 「私は認めないぞ、韓栄」
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