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夏侯優と初対面し韓栄が感じた印象は、自分には勿体無い好青年、だった。
涼しげな目元と穏やかそうな風貌に反して、筋骨隆々と逞しく頼り甲斐がある美丈夫、世の女性の理想を体現した様な男だ。世の男性の理想を斜め上に邁進する自分の相手をさせるのは気の毒ではないか、と彼女は父の人選を疑った。
「初めまして韓栄殿。夏侯優と申します。宜しく」
笑顔も非常に爽やかだ。若い韓栄は一瞬で好感を覚えた。
「初めまして、こちらこそよろしくお願い申し上げます」
韓栄がぎこちなく礼を返すと、夏侯優はじっと韓栄の顔を見つめる。
「……」
「あの、何か」
「失礼、美しい人だなと思ったんだ」
夏侯優は恥ずかしげもなく言った。
「! ……光栄に存じます」
美人とは言われ慣れている韓栄だが、同じ位の年頃の男性、しかも見目好い青年に言われるとときめくものがある。彼女は奥ゆかしい微笑みを返した。
「韓栄様」
遠慮がちな声が扉の向こうから聞こえる。胡翠だ。
「お茶を持って参りました」
「ありがとう、入って頂戴」
韓栄が返事をすると丁寧な所作で胡翠が入り、夏侯優、韓栄の順にお茶を置く。
「どうぞ、お口に合えば幸いです」
「……ありがとう」
夏侯優は茶に口を付け、「美味しい」と感想を言った。
「お口に合ったようで良かったです」
胡翠はにっこりと微笑んで室を後にした。
「胡翠はとても気が利いていい女性なのですよ」
韓栄は会話が見つからず取り敢えず胡翠を褒める。
「貴方が蓮の花だとしたら、彼女は蒲公英の花のようですね」
確かに彼女の健気さは、道端に咲く蒲公英に似ている。
「的確に思いますわ、花がお好きなのですか?」
「ええ、美しく、愛らしいので好きですよ」
夏侯優の頬は心なしか桃色に染まっていた。
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