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夏侯優殿、悪くない方だったわ……。韓栄は彼が帰った後頬を染める。
恋心を抱いたとは思わないが、将来この人の妻となったならば平穏で幸せな人生を生きることができるだろう。
「母上も、父上は結婚してからだんだん愛情を感じたと言っていたかしら」
ねぇ胡翠、と話しかけるとぼんやり物思いに耽っていた胡翠は「はい!」と耳に水を掛けられた様な声を上げた。
「ごめんなさい、驚かせたわね」
「いいえ、こちらこそ失礼致しました!」
「胡翠、どうかしら夏侯優殿と私……」
胡翠は少し考えた後にっこり笑って答える。
「ええ、とってもお似合いだと思いますよ、玉の様な御子が産まれるはずです」
「あら、気が早過ぎるわ」
韓栄はクスクスと笑みを浮かべる。その時韓栄は浮かれていたのか、胡翠が傷付いた様な顔をしたことに気付かなかった。
私の方が夏侯優様を好きな気持ちは負けないのに……
胡翠の心の中が一瞬闇に染まる。
いけないわ……韓栄様は夏侯優様を気に入っておられるのだから。
「また、お会いする日が楽しみですね」
「そうね、次は花でも飾ろうかしら」
そう、ほぼ兵法にしか興味がない韓栄様が殿方をもてなそうとしているのに。
二人は笑顔を交わすが、その裏の感情には、気付かない。
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