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「韓栄様! 不要になった紙などはお持ちですか? あれば少し分けていただきたいのですが……」
慎ましい胡翠が珍しく韓栄におねだりをするので少し目を丸くする。
「紙? そうね……ああ、これなら良いかしら、何に使うの?」
「ありがとうございます! 押花を作ろうと思ったのです!」
屈託のない花の様な笑顔を見て、韓栄はこういう顔を自分も出来れば良いのにと思った。
「押花……珍しいわね。そんなに素敵な花を見つけたの?」
「……はい、あまりにも可愛らしかったので、残しておきたいのです」
少し、返事に間があった気にするけど、何故かしら?
韓栄は夏侯優に貰った簪を仕舞いながら浮き足立っている胡翠を見送った。
胡翠は、わざと夏侯優に貰った蒲公英だと言わなかった。
……夏侯優様からいただいた花だなんて知ったら、韓栄様はお気を悪くするわよね。小間使い風情が自分の婚約者から贈り物を頂くなんて、おこがましいわ。
胡翠はそう思い込むことによって、彼女に対する後ろめたさに蓋をした。
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