二章

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韓栄はその夜、胡翠に思いを伝えた。 「胡翠、私は夏侯優様の妻になりたいと思うの」 胡翠は持っていた水桶を落としそうになった。 「そう……ですか。夏侯優様をお好きになられたんですね……」 韓栄は胡翠の掠れた声に首を傾げる。 「そう、ね……」 「? 今言葉に詰まられたようにお見受けしましたが……」 「ええ、実は『好き』という感覚に疑問があって」 「どういうことですか?」 「夏侯優殿は良い方だと思うけど、恋愛感情を持っているかはちょっとわからないの。恋愛をした事がないと厄介ね」 「……好きかどうかわからないのに結婚されるのですか?」 問い詰める胡翠に韓栄は観念したように苦笑する。 「貴女には正直に話すわ。夏侯家に嫁ぐと、軍師になれるかもしれないからよ」 「軍師に?」 「夏侯は兵法を好む私を好意的に見てくれるらしいの、もし私の才が李国で通用するのなら、官人として生きる道が得られるかもしれない」 「それが結婚の理由ですか……?」 「ええ、官人になる機会を得るなら、この身を夏侯家に委ねるのは、悪くないと思うから」 韓栄の瞳は、少し翳りがあった。しかし胡翠は気付かなかった。
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