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武琳は董亮の同期の徐安将軍の直属の兵卒になったらしい。彼女の仕官の儀から数日を経て、韓栄は用事がてら彼女のいる訓練場に向かう。彼女は普段あまり自分から積極的に人と関わらないが、同じ女官吏ならば興味をそそる。かんかん照りの空の下で威勢良く素振りをしている彼女を見つけると、躊躇なく声をかける。
「初めまして、武琳殿」
「貴女は……軍師の韓栄様! 初めまして!」
武琳は韓栄を既に知っているらしく屈託のない笑みを向ける。流れる汗が良く似合う。韓栄は涼しい顔で彼女を観察する。
「七色に輝いているわね、さぞ男の注目を浴びてるかしら?」
韓栄の物言いは意地悪だが、表情に嫌味はない。武琳は力いっぱいの言葉を返す。
「実力が劣るつもりはありませんから!」
気持ちいい返事だ。
「楽しみよ、宜しくね」
韓栄は挑戦的に口角を上げた。そして指揮を執る徐安に様子を尋ねる。
「流石威勢が良いわね、徐安将軍」
徐安は朴訥と見解を述べる。
「そうですね、正直あまり期待はしていませんでしたが、女ながら登用されるだけの実力はあります。流石に腕力は男に遅れを取りますが、恐ろしく勘がいい。下手するとその辺の男の兵卒より強い」
女がわざわざ登用されてる以上、男以下では意味が無い。
「その位じゃないと七光りは生きていかれないわ」
韓栄は懸命に訓練する武琳を見て目を細めた。
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