第一章

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とある昼下がり、韓栄が軍務室で書き物をしていると側近の関忠(かんちゅう)が文を持って来た。 「有難う」 韓栄は受け取るが関忠はそのまま少し浮かない顔をしている。 「どうしたの」 「いや、少し気になる事が……」 「何?」 韓栄の顔が険しくなる。 「これを私に持って来たのが、年端のいかぬ子供だったのです。どういう経緯で持って来たのか訊くと、顔中に怪我をして包帯を巻いた男から頼まれたと答えました」 韓栄が顎に手を当てる。 「確かに怪しいわね。顔を隠したかった可能性が高い。子どもなら、そう言えば素直に信じると踏んだのね」 韓栄は罠がないか文を確認した後、慎重に文を開く。 「!」 韓栄は文に目を通しながら息を呑む。 「どうしました?」 関忠は彼女のこめかみから流れる汗を不審に思う。 「いえ、大丈夫よ、宛先が意外な人だったから」 ……兄上の字だ。 「楊彪様の所に行ってくるわ」 彼女は文を握りしめ、楊彪がいる王間に向かった。
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