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運がいい
俺はイライラと腕組みしながら、根元まで吸い付くした煙草を地面に落とす。足元は、すでにいくつも吸殻が散らばっている。
待ち人はまだ来ない。俺はポケットをまさぐり新たな煙草を求めたが、全て吸い付くした後だった。
俺は舌打ちをし、辺りを見回した。俺の目は目当てのものを見つけ、少しばかり待ち合わせ場所を離れることにした。
自販機に金を入れ煙草と釣りを取ろうとしたとき、硬貨を地面にばらまいてしまった。五百円玉が甲高い金属音を立ててはね、側にある小さな社の賽銭箱に吸い込まれるように入っていった。
「あっ!」
ちくしょう。何故こんなところに、こんなものがあるんだ。今の俺には貴重な金なんだぞ。
俺は今にも崩れそうな小さな社に、睨み毒づいた。
と、その社から、半透明の古風めいた出で立ちの中年女性が現れた。
「まぁ、ほんに久しぶりの参詣者だこと。そのうえ寄与まで……」
そういうとそれは、右手を何かを摘まむような形を作り、俺に向かってその指先を広げてみせた。
……何のつもりだ?
問う間もなく、それは言葉を続ける。
「おやおや、どうやら、そなたの待ち人が来たようだね。
……さてと我はおいとましようかね」
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