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「おはようございます」
尚人さんの後ろからつむぎさんの声がした。
ニコッと柔らかな笑顔でさくらに話しかける。
「さくらちゃんお出かけ?」
「買い物に行くのー。お姉ちゃんはー?」
「ふふっ、映画を観てランチに行くの」
「デートだーデートだー!」
サラリと長い髪を揺らして、尚人さんの腕をとり歩き出す。
昨晩は喧嘩してたみたいだけど仲直りしたのね。
仲良く話しながら去っていく2人を見つめながらため息が漏れる。
私と夫は長い間、並んで歩くことすらない。
虚しさや怒り、イラつき、全てを飲み込んで今日も母の顔になる。
さくらの無垢な笑顔の前では、私も柔らかく微笑んでいたいから。
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