再会

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 エルフラン様の戸惑うような顔と何かを考えているダリウス様の顔を交互にみたが、二人は俺をはなす気はないらしい。  寝室に入ると、そこには大きすぎる寝台があった。側にソファが置いてあって、クリス様が座った。座るだけで絵になる彼の動きと対象に、その目は『どんな不正も見逃さない』と気合いをいれた裁判官よりも鋭かった。  視線を巡らせて、部屋の中にローレッタがいないことを確かめて、安堵した。繋がれたローレッタを見たら、俺はきっと嫉妬で狂ってしまっただろう。 「クリス様、止めさせてください――っ!」  二人は俺の夜着を簡単に剥ぎ取った。俺は、ローレッタとセドリックのことを想い抵抗らしい抵抗もできないまま寝台に押さえつけられる。後ろからエルフラン様が俺の手首を布で縛り、正面のダリウス様が俺に覆いかぶさった。 「クリス様っ!」  ごめんねと謝りながら、エルフラン様は首筋に口付けた。 「凄い鳥肌だな」  いっそ感心するような声を出し、俺の膝を開いて隙間に入ったダリウス様の香りに鳥肌から寒気が立つ。  近すぎる体温と感触に堪らず、意識を外に追い出すように目を閉じた。  クリス様の目の前で二人に身体をいじられ、抱かれるのだと思うと、恐怖と嫌悪で体が竦んだ。  クリス様は、嫌がる俺になんの感傷もないようだった。冷たく凍った目線に獰猛な光を湛えたまま、俺を食い入る様に見詰めているのに、口元には笑みを浮かべていた。  思い出さないように思考を閉じて、諦めたように力を抜いた。  抵抗を止めた俺の首筋から耳にかけてエルフラン様は舌でなぞる。ダリウス様は何もまとわない俺の太ももに口付けて反応を窺っているようだった。脚の間にダリウス様の軟らかい髪の毛がさわさわと触れて、気持ちが悪い。  目を閉じていると、舌の動きや音が艶(なま)めかしく耳をついて、吐きそうになる。  力を抜き、されるがままになっているのは、少しでも気持ちをそちらに持っていくとダリウス様を蹴飛ばし、エルフラン様を薙ぎ払って逃げたくなるからだ。ローレッタやセドリックへの陵辱を本当にクリス様がおこなったとは思っていないが、今この状況からいって、昔の優しい彼はどこかへいってしまったのかもしれない。そんなクリス様を信頼して逃げることは出来なかった。
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