3129人が本棚に入れています
本棚に追加
/290ページ
クリス様は、思案するように、両手を組んで息を吐いた。
「ダリ……」
その瞬間、俺は引きつるような痛みに喉を鳴らした。
突き立てるように、ダリウス様の指が俺の尻を穿ったからだ。
「グッ……!」
用意されていた潤滑材のために、切れて裂かれそうな痛みではなかったが、ショックと気持ちの悪さに身の毛がよだつ。
「っあ……。いや……嫌、嫌だって言ってる――!」
申し訳ないことにローレッタのことも、セドリックのことも忘れて、ダリウス様の顎を足の裏で蹴り上げていた。ダリウス様は寝台の向こう側へ弧を描いて飛んでいった。
「痛ぅ――。我慢しろっていったのに……、馬鹿。顎がおかしい……」
ガクガクと顎を上下に動かして、首の後ろを擦るダリウス様を睨みつける。
「もういい――」
クリス様は、立ち上がっていた。よろよろしながら寝台に戻ろうとしたダリウス様を止めて、俺を見下ろす。
「もう、わかった。どれほど淫らに調教された身体になっていたとしても……誰に抱かれた身体だとしても、私はこの子がいいらしい――」
後ろのエルフラン様を振り向いたら、安堵したように微笑んで「よかったですね」と言う。
俺を責めていた時のイヤラしさを微塵も感じさせないエルフラン様の声に、まさかと目で窺うと、痛ましそうな顔で頷かれた。
「まさか……、俺のことですか――?」
あまりの事態に声が震えてしまった。
淫らに調教? いつの間に誰に抱かれたんだ?
「一つだけ。クリス様、今日突っ込むのは止めた方がいいですよ。こんな狭くて固いところに突っ込んだら、突っ込んだ方も突っ込まれたほうも痛みで悶絶します。器具をいれて、少し広げてからやったほうがいい――」
ニヤリと意味深に笑ったダリウス様の顔に、俺はもう一発蹴りを食らわしてやろうと思ったが、エルフラン様に抱きとめられた。
「随分最初と違う。でも何も窺えない顔よりそちらのほうがよっぽど貴方らしくて、私は好きですよ」
エルフラン様は、拘束していた布を外し、シーツで俺を包んだ。
「どういう意味だ――?」
ダリウス様を睥睨するクリス様は、戸惑っていた。
「それは、ほら、本人に聞いた方がいいですよ。蹴られて、顎が外れない程度にね」
二人は「「お邪魔しました」」と扉の前で優雅に頭を下げて、笑い声を上げながら出て行った。
最初のコメントを投稿しよう!