再会

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しかも似せていたのは、俺自身だ。  赤くて長い睫の奥にある青い瞳に映る自分が見えて、驚いた。  これか……。物欲しそうな顔っていうのは――。  いきなり無言で赤くなった俺に、クリス様は訊ねる。 「どうした?」 「いえ、色々誤解してたんですね。恥ずかしくて……」  まさか自分の顔がみっともなくて、恥ずかしいとは言えず、俺はその場に合った言葉を探した。 「お前は言葉が足りなさすぎる。私もあまり人のことは言えないが……。出来れば私には話してくれ。辛い事も嬉しいことも、やりたいことも……全てを――」  懇願するような声の響きに、戸惑った。あまり自分の想いを口にだすということに慣れていないから、何を聞いていいのかわからなかった。  そうだ、ロッティのことを……。 「セドリックに会ったことはありますか? ローレッタは今どうしているんでしょうか」  俺は、今一番気になることをクリス様の手を握りながら、尋ねた。流石にセドリックを抱いたのかとか、ロッティを性奴隷にしてるっていうのは本当のことなのかとは聞けない。 「セドリック? ……ああっ! お前の弟だったか」  記憶を辿った先にはいたようだ。……あの男――。 「会った事はあるとは思うが。たしかリーエントの誕生の祝賀パーティに来ていたんじゃないか。そうだ、義姉上の産んだ第一王子がリーエントで、王女がレティシアというんだ。エルフランは、そんな説明もしてなかったのか――。ローレッタは、今、ダリウスの家にいる。夏には結婚する予定だ」 「え、ロッティが! ダリウス様と!」  目付きが鋭くなった俺に驚きながら、「ダリウスの事は、私が命じたことだから許してやってくれないか」とクリス様は言う。  あの人は、セドリックとローレッタのことで、俺を騙していたんですと怒鳴りたかったが、何も知らないクリス様に、あんな卑猥な事を告げ口することは出来なかった。  ローレッタを妻にするなんて余程懐の広い人なのか、それとも孕ませてしまったのだろうかと思う。ローレッタは俺の知る誰よりも心が強かった。口も悪かった。何よりも自由すぎる。ローレッタを貴族の奥方にする苦労を考えたら、俺は少しだけ溜飲が下がった。
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