星空の下

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〈視点戻ります〉  朝、庭を散歩して猫を捕まえた。  かわいいな~と撫でると、甘えてきたのでもしかして飼い猫なのかもしれな い。猫はお腹も触らせてくれた。俺は猫は触ったことがなかったけれど、本当 に可愛いかった。  家は弟のセドリックが動物を触るとかゆくなるから、馬以外はいない。一度 馬を触ってから、セドリックと一緒におやつを食べたら、大変なことになっ て、それから馬も触らせてもらえなくなった。おやつも一人で食べるように言 われて、本を読みながら部屋で食べていた。  父はロッティと。母はセドリックと――。 「どうしたんだ――? 具合が悪いのか?」  コツンと額を合わせられて、クリス様が帰ってきたことに俺は気付いた。 「いえ、ちょっと考え事をしていただけです。お帰りなさい、クリス様」 「部屋に戻ってお帰りとか言われると嬉しいものだな」  クリス様は、そう言って俺のドレスの背中のボタンを外していった。いきな り服を脱がそうとするクリス様に驚いて、見上げた。  俺はクリス様の腕の中にいると、何故かとても幸せだった。猫のようにゴロ ゴロと喉をならすことができるならこの気持ちをわかってもらえるだろうに。 「これに着替えて、星を見にいこう」  俺は、差し出された服を受け取り、少しだけガッカリしてしまった。もしか して触ってもらえるのかと期待してしまったのだ。今まで知らなかった快楽を 知った身体は簡単に火照ってしまう。 「熱でもあるのか――」  頬に触れられたが、やはり俺の思い違いだったようで、近づいた唇が落ちて くる事はなかった。 「いえ、大丈夫です。暖炉にあたっていたので」  俺は自意識過剰な自分に恥ずかしくなるが、クリス様は気にしていないよう だった。  差し出されたのは男物のシャツとトラウザーズ、暖かそうなフワフワの毛皮 がついた外套だった。  もう七時を過ぎているから、きっと夜空は綺麗に瞬いているだろうと思うと 心が弾んだ。 「そうやってみると、お前も男なんだな。女が男装しているようには見えない から不思議だ」  クリス様の面白がるような声に、俺は彼の意図に気付いた。 「……そうですか」  なんとか声を出せた。
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