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俺は朝からの余りの出来事に、思わずもう一度寝台に沈み込んだ。
「ダルイ……」
腰が痛い――。鈍い痛みがあちこちにあるし、筋肉痛のような痛みも全身に広がっていた。
お尻も痛い――。
散々受け入れさせられた尻がジンジンしている。
意識を失う前は、確かドロドロだったはずなのに、風呂でもいれられたのか全身綺麗になっているし、甘い匂いがした。
気持ちがいい……。
疲れのせいか、甘い香りのせいか、俺はもう一度まどろんでいた。扉さえ閉めてしまえは、隣の部屋の音は聞こえないのだ。
その時、俺は隣の部屋が大変な事になっているなんて思ってもみなかった。
お尻が痛くて、うつぶせで眠っていた俺の上掛けが乱暴に取り払われるまで、人が入ってきたことにも気付かなかった。
「ひっ! ルーファ、ロッティ! なんてことなの。ああ……」
悲鳴と、名前と悲嘆と……。
無理やり戻された意識がそこにいるはずのない人物を認識する。俺は、怖ろしくて顔を上げることが出来なかった。
何故、リリアナ様が――?
「クリストファー殿下! 未成年だと知っているでしょう! あなたの閨の相手をさせるためにロッティを呼んだのではありません!」
普段、声を荒げたりしないリリアナが厳しい口調で叫んだと思ったら、「うっ!」と呻いて倒れこんできたので、俺は慌てて起き上がり抱きとめた。
良かった、お腹は打ってない。
少しだけ安堵したが、周りは大慌だ。
「私が運ぶ。義姉上の部屋に侍医を呼べ!」
リリアナ様が倒れる瞬間に飛び出したのはクリス様も一緒だった。あれからどれだけの時間が経っていたのかわからないが服はきっちりと着ている。
前から俺が後ろからクリス様が抱きとめたから、倒れた衝撃はなかったと思うが、倒れるなんて普通じゃない。しかも彼女は妊婦なのだ。
リリアナ様を抱き上げたクリス様は、「義姉上は大丈夫だ。起き上がれたら食事をするんだぞ」と安心するように言った。
この人に任せたら大丈夫だと、俺は心から信じられる。頷く俺を置いて、部屋から皆が出て行った。
流石に体中が石のように重くても、眠る事はできなかった。
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