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いつもよりもゆっくりとエルフラン様は歩いてくれた。
「あの、失礼ながら……。事後の処置はちゃんと済ませてますか?」
エルフラン様の声は小さかった。
「事後処置?」
聞き取れたが、事後があのことかと理解できても、処置の意味がわからなかった。寝台は綺麗にされていたと思うけれど――。
「あなたは女の子だと思っていたので。クリス様も避妊されているかとおもっていたのですが……。クリス様が出されたものを……その……掻きだしましたか?」
俺は静かに固まった。
今、エルフラン様はなんて……? 掻きだす? どこから――? え……。
エルフラン様の顔は見たことがないくらい赤くなっていた。多分俺の顔はもっと赤いだろう。
「いえ、その……処置をしていないと、激しくお腹を壊す人もいるんです。あの方はあまりそういうことをされないので、心配になってしまって……」
あの方がクリス様のことだということはわかったが、もしかしてエルフラン様もクリス様に抱かれた事があるのだろうかと思うと微かに胸が痛んだ。
「いえ、あの……事後は覚えていませんが、身体は綺麗にしてもらっていました」
「ああっ! あ……いえ、そうですか。何かこう降りてくる感覚とかはないですか?」
「体がだるいだけで、そういうのはないです……」
ぼそぼそと小さすぎる声で、恥ずかしい会話を交わしながら歩いているとリリアナ様の部屋の前についた。
俺は、これから起こる事を想像すると足がすくんだ。
クリス様は悪くない――。俺が望んで無理に抱いてもらったんだ。
それは事実だ。クリス様は何度も煽るなと言っていた。我慢しているとも。それをぶち壊したのは俺自身なのだ。
「ロッティです」
中からアンネットが俺を招きいれてくれた。
「リリアナ様は?」
「今は眠っていらっしゃいます。大丈夫ですよ、ちょっと血圧が上がったんですって。お腹の御子にも大事はありませんから、そんな青い顔をされないで……」
「何故リリアナ様はクリス様の部屋に来たの?」
今思い出しても、朝の出来事はよくわからなかった。あの女の人は誰だったのだろう。
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