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赤面しているとアンネットが「リリアナ様がお呼びです」と部屋に入ってきた。
きっと馬鹿なことをしたと怒られるのだろうと思うと、気が重い。けれど倒れるほど心配をさせてしまったのだから謝罪をしなくてはいけない。
「ルーファ、こっちにいらっしゃい」
リリアナ様は怒っているそぶりは見せなかった。
「食事あまり出来ていないのではないの? イチゴ好きでしょう? 沢山食べなさいね」
どちらかというと、とても心配してくれているようだった。
「あの、リリアナ様……ごめんなさい」
俯く俺の手をとって、リリアナ様はソファの隣にかけるように促した。
「いいえ、私が気をつけるべきだったのよ。あなたは子供だし、男だから。まさかクリストファー殿下が手を出すなんて思ってもみなくて」
リリアナ様は「ごめんなさいね、ルーファ」と頭を撫でた。
「違うんです。俺、クリス様に凄く親切にしてもらって、嬉しくて……。俺がお願いしたんです。あの人は困っていました」
俺はクリス様が非難されるのが嫌だった。むずがる子供をあやすようにリリアナ様は俺を撫でるのを止めない。
「そうなの? でもあなたのことを少しでも想っていてくれるなら、クリストファー殿下はあなたに手を出すべきじゃなかったわ」
俺をなだめるようにイチゴムースを手渡してくれた。
「クリストファー殿下はローレッタに婚約を申し込んでいるのだから……。もしかしたらあなたを見て、双子のローレッタとあなたを二人とも自分のものにされるおつもりなのかしら。……あなたは、あの子と比べられるのは嫌でしょう?」
「ロッティと?」
婚約……?
俺の声は震えていたと思う。
「ええ。だから……あなたが殿下の部屋に寝泊りしていると聞いても心配しなかったのよ」
ローレッタと比べられる日々は、リリアナ様に言われなくてももう二度と御免だった。顔もそっくりな俺たちなのに、その注がれる愛情の差に、何度声を詰まらせた事だろう。
クリス様が、ローレッタを抱く? 俺にしたように蕩けるような口付けを与えて、何も考えられなくなるまで快感で溶かすのか――。
想像しただけで俺の心を切りつけるような痛みが走った。
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