愛しさは募るばかり

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 視点変更あり 「おはようございます」  いつものようにエルフランに起こされて、食事をとる。珈琲と少しの果物、夜は飲みすぎることも多いから、朝はそれほど食べない。エルフランはそれを知っているから、イチゴを五粒だけ皿に載せてきた。  イチゴをみるとロッティの嬉しそうな顔が浮かぶ。 「重症だな……」 「なにかおっしゃいましたか?」  エルフランが聞き返してきたが「なんでもない」とだけ返した。  私だっていい大人だし、どちらかというと昔からあちこちの花を食い散らしてきた覚えもあるので、言いたくなかったが、あれは本当に『誘惑に負けた』のだ。  国が定める十六歳という成人と神殿が定める十八歳という成人、そのどちらにも達していないまだ子供でしかないロッティを請われるままに抱いてしまった。  ダリウスにしてほしいというロッティ。これほど大事にしているのに他の男の名を呼ぶ愚かさを、思い知らせてやろうと思って、何の快感も与えないまま、尻に指を入れた。その行為を知らないロッティには、恐怖だっただろう。最初から気持ちがいいわけもなく、私の怒りにロッティは、震え、泣いた。  私は嗜虐趣味はない。が、相手の快感も今まではどうでも良かった。自分が気持ちよくなる為に行うことと相手のための行為は、やることが一緒でも、全く意味が違う。  腕の拘束を解くと、ロッティは涙を必死に拭っていた。慰めようと口付けするために身体をかえして、私は、自分が怒りをぶつけるためにした行為を後悔した。  ロッティの涙で濡れて真っ赤になった顔を見た瞬間、私の怒りが鎮火した。  私は今まで人を愛した事などなかったのだろう――。  ロッティが泣く姿は、私に溢れて零れることのない温かいものを胸に満たした。同時に悲嘆にくれるその姿に打ちのめされた。自分が与えるものは、そんな悲しみの色に染められたものでなくていい。  ロッティは、何を思ったのか私が煽るなと教えた言葉を囁いて、私に強請った。必死な様から『愛して欲しい』と聞こえてくるのは、私の希望だろうか。  国が定める成人は、家をでて一人立ちするための年、もしくは社交界などに顔を出していい年のことで、気持ち的なものが多く、神殿が定める方の成人は、神殿に祝福してもらって結婚するための年のことだ。ロッティが十六歳になったら正式に婚約して、十八歳になったら結婚するつもりだった。
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