前書き

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「人間とは、無意味である」と。 それは人間を否定しているのではなく、大自然の一部として、それは石や草木と同等の価値を持ち、この世界に存在するのである。 どんなに足掻いたところで、我々は結局自然に逆らえないのである。 ならば人間は滅亡すべきなのであろうか。 否、私は「絶対」に抜け出せない自然というカルマから抜け出そうと必死に足掻く姿こそが、「人間」のあるべき姿であると思うのだ。 哀れで、惨めで、それでいて美しいある刹那的輝き。 その輝きこそが、我々が「人」である証明のように思われるのだ。 だから「芸術」こそが、音楽から絵画、さらには文章を使って「人間」を体現する最高で崇高な作法だと思われる。 ならば私は人としての本質を芸術に、アートにできようか。 ならば私は人間を理解し得ているであろうか。 答えはノーだ。 だから私は少しばかり、自らの「人間性」を高める旅に出ようと思う。 知識や感受性、さらには肉体的な向上が、我が魂に認められるまで、高みを目指し続けようと思う。 それが何年かかるかなんぞさっぱりわからない。 数日だろうか。 一生だろうか。 それでももし私が「人間」として生きようと試みるなら、決して避けては通れない道なのだ。 さらばだ、佐々谷 燈よ。     
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