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Envy of the Usual Days
(注釈:舞台はアメリカのとある町である)
その光景を見た僕に、恐怖はなかった。
まだ成長するであろうこの体の奥底に秘められていたのは、どちらかというと喜びであった。
激しい物音で起こされ、二階の自室から部屋のリビングに駆けつけると、そこには「非日常」が存在していた。
今朝いつも通り冷たい牛乳をシリアルにかけ、そうしてついぞ先ほどまで母親が手抜きで作るミートソーススパゲティをうんざりしながら夕食を食べていたダイニングテーブルには、人が乗っていた。
父親だった。
いや、正確には父親だったものだ。
青いはずのチェック柄のシャツが、真紅に染まっている。
息は多分、もうしていない。
仰向けに倒れていると、腹が出ているのがよく分かる。
そのテーブルの床下には、安っぽいスパゲティを作った母親が、斧を握りしめて横たわっていた。
こちらも白いカーディガンが、父親とお揃いの色をつけていた。
床もまた、真っ赤に塗られている。
そうしてそのすぐ横で、キッチンに寄りかかって息絶え絶えになっている、覆面をかぶった男。
頭の布切れが破れているところを見ると、恐らく母親が最期の力を振り絞って、男に致命傷を与えたのだろう。
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