Envy of the Usual Days

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もうあのスパゲティが食べられなくなるのかと思うと残念であったが、どうでもよかった。 別段僕は家族を嫌っていたわけではなかった。 むしろ世間から見れば、僕は親思いであったと思う。 誕生日を丹精込めたバースデーカードで祝い、喧嘩もしたし怒られもしたが、それでも今日まで仲良くやってきた。 だが至極冷静に物事を見つめている自分がいるのも、また事実であった。 それはどこか冷めていて、自分でも驚くくらい非道徳的であったが、大衆基準のモラルなど、僕以外の生命の輝きが消えているこの閉鎖的空間においては、何の意味も成さなかった。 いや、だからこそ僕がこの見えている「世界」の法律であり、王なのだ。 そう考えると何故だかあの死にかけている男から苦しみも取り除くこともまた、王の「役割」なのである。 救急車を呼んでも、この男は長く後遺症に苦しんで死ぬか、治癒しても、世間の冷たい批判と怒りに晒されるだけである。 ならば僕が王として、この限定的な世界の圧倒的な「神」として、彼の命と人生を天秤に掛け、そうして僕の正義に乗っ取ってここで彼を「救う」ことは必然なのである。 足元に落ちていた銃を拾い上げる。 僕がひどく冷静であったのはこのためである。 生まれて初めて現物を見たのは、これが初めてであった。     
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