Envy of the Usual Days

3/4

0人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
水は人を清めることもできるし、沈めることもできる。 車は人を乗せることもできるし、轢くこともできる。 ナイフは果物を切ることもできるし、刺すこともできる。 ただ銃だけは、その鈍い光を放つ鉄の塊だけは、どうしたって使用用途が一つしかないのである。 「人を殺す」。 その命を奪うことを目的とした人の作りし最高傑作は、僕の目にはどんな高価なブランド物のスニーカーや金塊よりも「プレシャス」に感じられた。 手に取ると直に伝わる冷たさは、僕の身体中の血液を冷やすのではないかと思われる。 銃の使い方は、映画を見て一通り覚えているはずだったが、それは架空の世界での出来事になって、心配になってポケットに入っていた携帯で調べた。 1.弾倉を入れる 2.スライドを後ろに引く 3.安全装置を外す たったこれだけである。 この少ない動作で、人の命を奪うのである。 どうやらこの銃はすでに何発か発射されていたため、最後の工程を行うだけなので、実質安全装置を外して引き金を引くだけであった。 カチッという乾いた音を立てて、銃は「生」を奪う段階へと入った。 男の方を見ると、まだ微かに息を立てていた。     
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加