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結局未だこの社会から銃が消えないのは、彼らの本質的欲求の中に「殺したい」という欲望が存在するからである。
猟銃でさえ、人間でなくても動物の「命」を奪うようにデザインされている。
自然の一部として存在し、彼ら動物と同等の価値しかない我々人類に、そんな傲慢さは許されない。
だから彼らのような人間は互いに疑心暗鬼になって、「攻撃」を「防御」と称してその愚かさを覆い隠そうとするのだ。
「ま、いっか」
男は自分の境遇から自らの行いを肯定しようとした。
ならば僕のこれから行う行動も、肯定されるだろう。
この数分で絶望的状況下に置かれた脳は驚くほど冴えて、僕のヒロイズムが論理的に構築されていくのを実感した。
それは支配する喜びであった。
それは失われた悲しみであった。
それは自分勝手な怒りであった。
静かに呼吸をし、なんの前触れもなく引き金を引いた。
大きな破裂音が耳を劈き、部屋中に響き渡る。
両手で握っていたにも関わらず、強い衝撃が肩を襲う。
「うっ」
そういうと男は地面に崩れ落ちた。
再び安全バーを解除して、狙いを定める。
「これ意外と狙いを定めるの難しいのなぁ」
独り言は硝煙とともに空気の中に消えていく。
男の意識を確認すると、微かに灯る命を使って、僕を睨んでいた。
だから撃った。
「ゆる......さ......な」
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