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そして母にはささやかな拍手が贈られた。
「よく出来ました」
その柔和な笑顔を見て、母は動揺を隠せなかったようだ。
「君は、どこの子だい?」
政治家の娘は何かと風当たりが強いのよ、と母は苦笑する。当時の母は押し黙ったが、青年は推し量ってくれたらしい。
「言えないのかい、まぁ一人でこんな所に来るくらいだからね。……でも僕もあまり素性を知られたくないんだ。言わなくていいよ」
「……名前は霞子です」
「いい名前だね。僕は正清です」
蝋燭に灯る明かりのような笑顔は、今でも忘れていないと言った母の顔は、少し哀しげだった。
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