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「そう見えないでしょう? それは私が今までの関係は完全に止めてって言ったからよ」
母はアルトサックスを分解して錘のついた布を通し始める。多分水分を拭き取っているのだろう。
「今まで、私達の若い頃の話はした事なかったわね。丁度いいからしてしまおうかしら」
「……いいの?」
今まで、私は彼らの昔話を聞いた事がなかった。祖父母と会った事もない。幼い頃何度か聞いてみた事があるのだが、父も母も居心地悪そうな態度をとって適当に話を濁すので、聞いてはいけないものだと思っていたのだ。
「いいわ、気になるでしょう。楽器を片付けるから下に降りていて頂戴。お湯を沸かしてお茶を入れておいて」
母は吹き口も分解して先程より丁寧に水分を抜き始める。私は早鐘のように鳴る心臓を押さえながら、階下に降りた。
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