出逢い

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「先にマウスピースだけ取って練習してごらん?」 優しげな声がして振り向くと、清楚な出で立ちの青年がそこに座っていたらしい。柔らかな髪の線の細い美青年だったそうだ。 「マウスピース?」 「ああ、吹き口の事だよ。ちょっと本体から外してみて」 穏やかな口調だからついつい母は言う事を聞いてしまったらしい。 「力抜いて。下の歯を下唇でくるんで、木の板を乗せてそれから吹き口を唇で覆うんだ。それから息を吹き込んで」 言う通りにすると、たちまち気持ちいい音が社に(とどろ)いた。それはとても音色とは呼べないものだったけど、母はとても興奮したらしい。 「すごい! 鳴った! 鳴ったわ!」
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