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「きっと現れるさ」
和馬はそう言って女性の隣に腰掛けた。
「私だけ言うなんて不公平だわ、あなたも願い事を叶えにきたんでしょ?どんな願い事?」
「実は彼女に少しひどい振られ方をしてな……。俺にはアイツしかいなかったのにアイツはそうじゃなかったらしい。この心の穴を埋めてくれるなにかがあればと思って来てみたんだ」
和馬は声に出してみて、改めてバカバカしいと思った。
「そう、あなたもひとりなのね……」
彼女はそう言って和馬の腕に触れる。人に触れられるのが久しぶりなせいか、少し胸が高鳴った。
「ところでそろそろ名前を教えて貰えないか?俺は速水和馬っていうんだ」
「ふふ、確かにこんなにおしゃべりしてて名乗らないなんて変な話だものね。私は松永愛香よ」
「なぁ、愛香さん。ここには俺しかいない。気味悪がったりなんかしないから包帯を外してみないか?」
「そうね、ずっとしてると暑くて」
愛香は包帯を外すと、何度か瞬きをした。
彼女の目の周辺は赤く爛れて腫れている。それでも彼女が美しい事に変わりない。
和馬が愛香の美しさに言葉を失っていると、彼女は悲しそうな顔をした。
「やっぱり、気持ち悪いわよね……」
「そんな事ない!……その、予想外に美人だったものだから、驚いただけで……」
和馬は慌てて本音を伝える。
「無理しなくていいのよ」
「無理なんかじゃない!綺麗だ……」
和馬は愛香の肩を掴んでまっすぐ彼女の目を見て言った。
和馬の真剣な眼差しでそれが本心だと悟った愛香は、涙を流す。
「え?あ、痛かったか!?すまん!」
和馬は愛香の肩を離し、慌てふためく。
「ううん、違うの……。本当に綺麗だって言ってくれるのが嬉しくて……ありがとう」
愛香は涙を流しながらも微笑んだ。
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