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「はぁ……」
重いため息が部屋中を木霊する。
虚ろな心のまま、ひたすらに原稿用紙に向かい合っていた。
今日でそろそろ一週間となる。
あんな幻想にそそのかされて、書いている私自身、きっと気が狂っていたのかもしれない。
幻想だと思えば筆を止めればいいだけの話。
しかし、私にはそれが出来ない。
書かなければ、私の最後の作品を。
紡がなければ、物語を。
そうしなければ、私という個は死んでしまうのだから。
ゴリゴリと万年筆を原稿用紙へまるで削るかのように書いていく。
ありもしない空想・空論・絵空事。
書いていくことが楽しい時期もあった。
あの頃は誰しもが私のことを褒めてくれていたような気がする。
けど、今はどうだろうか?
私の上には山ほどの壁が立ちはだかっていて、いつも、見下すように私を見る。
そんな視線に耐え切れず、チャレンジすることも出来ず、私は日陰で暮らしていくしかなくなっている。
いつか見返すことが出来たら、そんな事、到底無理で。
私はずっと底辺を彷徨っているだけなのだ。
そんな私がひょんなことからこんな機会を与えられて、
思うが侭に連ねている。
彼らの目的が何なのか、そんな事を知ることも出来ない。
私は言われた通りただただ、“命”を削って描く。
文字通り、命を。
生命を絞り、そして、書き続ける。
それだけしか出来ない。
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