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舩橋が眠りに落ちたのを確認すると、渋沢はゆっくりとブルーシートを元に戻し、花見を再開した。風が止むことなく、吹き続ける。
「君は美しい。その美しさで人を誘惑し、喰らうのだろう? 次の獲物は君に譲ろう。花弁が散るまでの短い間だが、よろしく頼むよ。人は虫の如く、桜に引き寄せられるんだ。君もわかっていているんだろう」
桜の枝は嗤うかのようにサワサワと優雅に揺れた。花びらが宙に舞い、踊りを披露しているかのようであった。
とても美しい風景だ。
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