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赤い山門を潜り暫く行くと売店があり、其処で5百羅漢と本堂の入場券が販売されていた。
「此処もこの次に来た時だ」
それに頷きながらも、本当は入りたいと言う欲求が出てきた。
「何だ、入りたいのか?」
その質問に慌てて首を振った。今日中に七福神をクリアしなければ次につづかないからだ。
(うん。此処も次に来た時)
そう割り切った。
「寄居にも5百羅漢があるんだ」
先輩が講釈を始める。
「少林寺って言うのだけどね。此処の僧侶が檀家の奥さんとねんごにろなって情を交わしている内に旦那に知られてしまったそうだ」
「ねんごにろ? ただの浮気でしょ? 今で言うなら不倫かな?」
「ああ、そうだ」
「あの、それがどうして5百羅漢と結び付いたのかそれを知りたい」
「木に吊るされそうになるところを、5百羅漢を建立するために3年待ってくれとお願いしたそうだ。その後で托鉢しながら江戸の石切場に行って頼んだそうだ」
「で、3年で出来たのですか?」
「いやそのお金じゃ無理だと断られたんだ。その足で吉原に行って豪遊したそうだ。其処にいた遊女達に説教をして3倍のお金を貢がせたんだ」
「浮気目当てだったりして?」
「ま、そう言うことだけど。遊女達は自分が救われることを信じたんだな」
「それでもです、か? やっぱりお坊さんの力は凄いんだ」
「そうだね。それに一度に大人数で掘ったから、ノミ使い方も違うんだ。それだけ味わい深いんだな。托鉢で50円得たけど、150円ならって言われて」
「その50円で遊び、遊女に寄付させたわけね」
「僧侶は身支度をして荒川の船着き場から向こう岸に渡り、川沿を托鉢して江戸の向島に着いたそうだ」
「その時集まったお金が50円だったのね?」
「そうだ。そこで麻布の石工を教えられ訪ねたら150円ならって言われて吉原に行った訳だ」
「きっと、『悲しいことや辛いこともあっただろう』なんてくどいたんだね?」
私の推察の良さに負けて、先輩はただ頷くことしか出来なかった。
「だから石工は頑張ってくれたわけだよ。本当のことは知らなくても、坊さんだから、功徳を詰みたかったのかも知れないな」
先輩は5百羅漢の並んでいるらしい道を脇を歩きながら言っていた。
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