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折角の中院の枝垂れ桜を、詐欺事件の説明で楽しむことが出来ない。
それでも私は続けるしかなかった。地元の刑事に母が受けた侮辱を先輩に解ってほしくなっていたからだ。
「刑事が事情聴取をしている時に兄から電話があったんだって。画面に名前があったんだって。その電話に刑事が出て『もしもし、お兄ちゃんだよ』って」
「何それ?」
「刑事が、母の前で兄の兄を騙ったんだってさ」
「お前さんにお兄さんが二人いる訳か? その刑事が一番のワルみたいだな」
「そうなのよ。母を揺さぶって遊んでいたの」
「訴えてやったら?」
「母もそう思ったらしいけど、刑事が何故本気になれないかをその後知った訳よ」
「何だろ?」
「あのね。警視庁から刑事が来てね、事件は警視庁に引き継がれることになったな。犯人は栃木県で捕まった らしいの。母のは別件で……」
「そうか、地元の刑事が犯人を捕まえても警視庁に持っていかれるんだ。だから本気になれないってことか?」
先輩の言葉に頷いた。
「詐欺事件なんかで俺達を煩わせるな。ってことでしょう」
「お母さんにしたら、詐欺の犯人よりも刑事の方が許せないってことだな」
「うん。その通り。あのね、刑事はすぐに全部のタクシー会社に連絡したって言ったんだって。でも警視庁からの刑事はそのタクシーの運転手を割り出したそうよ」
「流石警視庁の刑事だ。でもちょっと待て、ちゃんと捜査していればその場で逮捕出来たのかも知れないな?」
「そうなのよ。母の通話記録では、現金の受け渡し事件が発生してから1時間後だったの。それに、アジトも割り出せた可能性もあったみたいなの」
「逆探知機を弄ばなければってことか?」
「警視庁の刑事によれば家の電話に掛かって来たのがアジトからで、携帯に掛かって来たのとは別だったみたいです」
「本当に馬鹿だね、その刑事。アジトが判明したら、未然に防げた事件があったかも知れないのにな」
「母もそれを言ったいたわ。母はね、鎮守様に向かう前にその電話を受けて不振に思ったんだって。だから犯人の後ろ姿を撮影したの。だからコンビニの防犯カメラで犯人が特定出来たの」
「えっ!? それでも動かなかったの?」
「本気に馬鹿な刑事がいてね」
私達は何時の間にか意気投合していた。
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