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とにもかくにも、私達のロケーションは其処から始まったのだ。
私は川越市の駅で下りて、先輩が待つ本川越の駅に向かった。
階段を下りた場所にインフォメーションボードがあって、催し物などのパンフレットあった。私はその中から市内を把握出来る折り畳みの地図をいただきポケットにしまった。
此処から約10分も歩けば着くはずだ。私は自然と早足になっていた。
先輩を待たせておいて、私が遅れたりしたら何を言われるか解らないからだ。
先輩がそんな人ではないことは知っていた。だから尚のこと時間厳守でいきたいのだ。
でもいくら待っても先輩は現れなかった。
(何をやってるの)
腸がは煮え繰り返って、自分を押さえられない。
「先輩の馬鹿」
私は本川越駅前のスクランブル交差点を羨ましくみていた。
「此処で何をしてる?」
その声に振り向いたら先輩が怖い顔をして睨んでいた。
(えっ!? 何か悪いことした?)
私はキョトンとしていた。
「何故待ち合わせ場所に来ない?」
「だって此処でしょ?」
「まさかと思って来てみたら? やっぱり此処にいた。確かに『何処でもいいよ。本川越駅が一番便利だけど、川越市駅でも』とは言った」
「やっぱり本川越って言った」
「俺は川越市駅のつもりで言ったんだ。新河岸駅まで行こうと思っていたからな。彼処は急行は止まらないからな」
「新河岸駅? あのー川越で喜多院とか回るんじゃなく……」
「そう、新河岸駅だ。川越舟運の歴史を調べようと思ってな。だからホームで待っていたんだよ。全く、電車代の無駄遣いだ」
「そんなの聞いてないよー」
私は落ち込んでいた。川越の蔵造りの街並みと菓子屋横丁。楽しい取材になると思っていたからだ。それを先輩ときたら……
途端に嫌気が差してきた。でも仕事と割り切らなければいけないのだ。
先輩が立てた企画なのだから。
そうは思っても納得出来ない。それでも私は先輩に付き合うことにした。
それ以外道はなかったからだ。
新河岸駅の近くに地下道があり、中に川越舟運らしいモザイクが掲げられていた。
(えっ!? これは馬車よね?)
川越舟運だから船の絵かと思い近付いた私は、又先輩を疑い始めていた。
でも地下道の先には船着き場らしい絵も飾ってあった。
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