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やっと相棒となった私と先輩が、一番先に始めたことは企画の成功を祈願することだった。私達は川越の七福神へ行くことを選択したのだ。其処へ行くのに一番近い駅は川越駅だった。
『本川越駅からは反対に回れるけど……』
『いいや、ここはやはり正規に行こう』
先輩が私を気遣って言ってくれた。東武東上線の沿線に住む私にとっては、本当に有り難いことだったのだ。
三角形の鏡を張り合わせたようなモニュメントのある駅前の階段を下り、デパートを左に見ながら右の道を行く。
「何となくビッグサイトに……」
「あぁ、あの形は似てるね」
「でしょ?」
私は憧れの先輩が傍に居ることが嬉しくて、ワクワクしていた。
「あれっ」
先輩が立ち止まった。
「どうしたのですか?」
「この脇の道を真っ直ぐに行けたはずだったんだ」
「えっ、でも仕方ないので回り道……」
「それしかないか。じゃ、この細い道を行くか?」
先輩が示した下には点字ブロックがあるにはある。でもその横には柱があって危険だと感じた。
「あの道を暫く行くと妙善寺が現れるはずだったんだ」
「でもその手前はフェンスで閉鎖されていたし、この道はちょっと危ないし……」
「観光に力を入れてる割りには、見落とされている場所も多い気がするな」
「私達で、何とか出来ればいいですね」
「いや、俺達にそんな力はないよ」
「いいえ、遣ってみなければ解りませんよ」
「そんなもんかな?」
「そんなもんです。ねえ先輩、仕方ないので建物の横から回りましょうか?」
「よし、裏道でも行くか?」
私達はその次の角を曲がりその先を右に折れた。
高床式とでも言うのだろうか? そのお寺は階段の上にあった。
このお寺の本像は毘沙門天だ。
川越駅に近い住宅地に妙善寺はある。
1624寛永元年に創建された天台宗の寺で、現在の堂宇は昭和53年に再建築された。本尊は智証大師作の不動明王。本堂の扉が少し開けられており、その隙間から本堂内に安置されている毘沙門天像を拝顔することが出来る。
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