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Chapter1 二人の教師
「やあ、おはよう!」
「今日は遅刻せずにちゃんと来たな。偉いぞ!」
朝の登校時間。
教師が率先して生徒にあいさつをすることが大事だ。
恥ずかしさや反抗心から、私があいさつしても無視する生徒もいるが、そんなことは気にしない。
大らかで明るいと人からよく言われる私の性格は、多感な時期である高校生を相手にするこの職業が向いている。
自分でもそう思うし、実際についこの間も同僚の教師に
「高田先生は生徒から人気がありますね。
毎年生徒たちが勝手にやっている教師の人気投票で、今年もまた高田先生が1位だったみたいですよ。」
と言われた。
そんなことを考えながら歩いていると、頬に何かが触れた。
桜の花びらだ。
見上げると、すでに葉桜ながらも、懸命に最後まで命を燃やそうとしている散りかけの桜が咲いている。
桜の木の下で立ち止まり
(わたしは、この天職、教師としての役割を全うしよう。)
もうすぐで全て散ってしまうであろう桜の花に、そう誓った。
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