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なぜ、桜は人の心を魅了するのだろう。
ある人はその美しさから、ある人は日本人の心だからだと言う。
少女が住む地域では、桜は願いをかなえる神聖なものとされていた。
時には人をなぐさめ、人を守るからだと小さな頃から教えられてくる。
それは今でも変わることがなく、ある一本の桜の木にはしめ縄が張られていた。
いつからこの桜は御神木とされて、ここに“生きて”いるのだろう。
少女は高校の登下校で、毎日この桜を見上げていた。
生まれてからずっとそこにいるからなのか、懐かしさに似た思いがあった。
風が吹き、枝が揺れるのを見ると話し掛けられているような錯覚まで感じる。
ずっと見つめていると、引き込まれて……いや、吸い込まれてしまいそうになった。
その度に、何気なくでもなく敢えて目をそらしていた。
御神木とされていることもあって、その桜の木には何かの力が宿っているのでは……。
一体、どうして御神木とされるようになったのか。
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