少女の桜

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少女の桜

涙の渇いた頬に、春の風が吹き抜ける。 ひんやりとした感じがして、少女は自分が泣いていたのだと気が付いた。 そっと目元を拭うと、満開に咲く桜を見上げる。 ……神様みたいな桜。 「だから御神木としてしめ縄が張られているの?」 少女は“桜”に訊ねた。 答えはしないけれど、少女にはそれが答えなのだろうと感じられる。 ……桜は願いをかなえる神聖なもの 少女があの少年と出会ったのは、 桜が傷を負った理由を知りたいという願望を叶えてくれたからかもしれない。 横に大きく張り出した枝の下、斜めにえぐられた傷は確かに残っている。 あの少年の願いは、かなえられただろうか。 ここに桜が今もこうして“生きて”いるということは、 守ることができたということ。 きっと、そうなのだろう……。
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