春風に願いをのせて

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   立ち上がりつつ振り返る俺の目に衝撃が飛び込んできた。  ……メガーネ? 「左右で見え方違うの、やっぱり不便でさ。予備に持ってきてたから」    レンズの下側だけに付いた細いエビ茶色のフチ。  大きめの楕円レンズ。   「ちょっと、イケてな……いかも?」  それどころか、とんでもなく可愛い。  メガネをかけ慣れてなくて、両手で位置を調整しちゃう仕草はまるで天使。  レンズ越しに向かって来た彼女の視線は、俺の心臓を容易く鷲掴みにした。  いや、鷲掴んでくれとばかりに心臓が飛び出した。    お陰で心臓がヤバい。  物凄くヤバい。  後多分、顔もヤバい。  ヤバいぐらいヤバい感じがヤバい。 「どした?」  小首を傾げる愛奈の姿はまさしくトドメに相応しかった。
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