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ふたり
終業のベルが鳴った。白羽市立高校の校舎から次々と生徒たちが校庭に踊り出た。
あるものは笑いながら、あるものは面倒臭そうに、それぞれの放課後の予定に向かってゆく。
「まゆみーっ! 一緒に帰ろっか?」
雪子は正門前で見知った背中を見つけて、声をかけた。
「あー、ごめん雪子。あたし先約があるんだ」
声をかけられたまゆみと呼ばれた女の子は、申し訳なさそうに、両手を合わせた。背は150cmくらい、中肉中背、17歳という年齢の割には控えめなバストとヒップ、ショートカットの髪型と、やや太めの眉毛が、快活さと意思の強さを感じさせた。
「先約ゥ? なによ。あたしを置いて彼氏でも作ったの? デート?」
雪子は髪を跳ね上げ、メガネを大仰に直しながら、まゆみの顔を覗き込む。揺れるロングの髪の先が、まゆみの額に触れた。
「ちがうよぉ?」
困ったなぁ、という顔で、まゆみは手を振る。
「ほら、わたし、けーちゃんと巨人広場に行くつもりなの」
「けーちゃん? ひょっとして、和泉圭一のこと? あの不良の?」
雪子があからさまに嫌悪の表情を見せた。まゆみは即座に弁護する。
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