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「喧嘩ってか、一方的に目の敵にされてんだよ。しょーがねーだろ?」
「ちょっと待って。止まって」
「ん?」
圭一が足を止めると、下からまゆみが手を伸ばす。
その手には真新しいバンソウコウがあった。
「いや、いいよ!」
「だーめ!」
まゆみは断固とした口調で圭一に命令する。
「ほら、じっとしてて!」
なおもぶつぶつと不平をいう圭一だったが、まゆみが一度言い出したら聞かないことを知っていた。だから、彼は、されるがままになった。
まゆみは圭一の生傷をティッシュペーパーで拭って汚れを取ると、バンソウコウを貼り付けた。
2人組の、同じ学校の女子生徒が、まゆみの横を歩いてゆく。女子生徒たちは圭一に密着しているまゆみの姿をチラチラと横目で見ながら、声を出さずに笑い、足早に去っていった。こんなとき、圭一は恥ずかしい。だけど、まゆみは気にもしない。
「さぁできた! 行こうよ!」
今度はまゆみが先を歩いた。後ろから圭一が、歩幅を短くしながらついて行く。
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