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白羽市
背の低い建物の立ち並ぶ住宅地は、夕日に染まっている。
その向こうに、オレンジ色の光を浴びてうずくまる巨大な人型がいた。あれが、この白羽市の巨人だった。
「お前も物好きだよなぁ」
「なぁに? けーちゃん」
「今時あの巨人に関心があるのは、偏屈な学者のジジイくらいだぜ。お前があそこに行くのって、ほとんど毎日じゃねーか?」
「うん。キュウちゃんが待ってるような気がするから」
「そのキュウちゃんってのもヘンだ」
「ヘン? そっかな?」
「巨人に勝手に名前をつけるなんてよ。学者がつけた正式な名称は『特殊外宇宙飛来物質・10号』で、普通の人はただ巨人と呼んでる。そんな名前つけてんの、地球上でお前だけかもよ」
「いーじゃない。名前がないなんて、かわいそうよ」
まゆみは、横断歩道の白い線を綱渡りをするかのようなポーズで渡ってゆく。圭一が後ろから大股でついて行く。
横断歩道を渡りきったところで、まゆみが思い出したようにいった。
「あ、けーちゃんお腹すいてない? 角の巨人屋でなんか食べていかない?」
「いいぜ。今日はお前のおごりでいいか?」
「いーよ。行こう行こう!」
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