白羽市

2/3
前へ
/30ページ
次へ
 巨人屋は高校と最寄り駅の、ちょうど中間にある食べ物屋だ。店内にも席はあるが、5人座ればいっぱいになってしまうので、もっぱら食べ歩きしたい客向けの店になっている。  まゆみと圭一も、もちろん、食べ歩きが目当てだった。 「はい、まゆみちゃんはコレ、そっちのニーチャンはコレね。いつもありがとうね」  中年女性の店主が笑顔で紙パックを渡した。まゆみはさっそく、巨人焼き……という名前の、人型に成形されたお好み焼きにかぶりつく。圭一も隣で自分の分を食べていた。  巨人屋の店主は、談笑する二人の姿を羨ましそうに眺めたあと、自分の仕事に戻った。学生の下校時間はかきいれ時だ。彼女が作り置きをしようとハケを手にしたその時、店内のテレビから耳慣れない言葉が聞こえてきた。 『緊急速報です。緊急速報です』  客席の端っこにある小さなテレビは、この時間、いつもならドラマの再放送をやっているものだが、今日はちょっと違った。 『本日先程、国際外宇宙監視委員会が発表を行いました。監視衛生の画像データを分析したところ、新たな巨人と思われる物体が地球に接近していることが確認されました』 「おやまぁ」店主は甲高い声を上げた。「ねえ、まゆみちゃん。このニュース知ってた?」  そういって、店の外に声をかけたが、そこにいたのはまゆみとは違う、別の学校の女子生徒だった。 「え? あのう……」     
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加