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巨人広場
巨人焼きを食べ終えて、当面の雑談の話題も尽きたころ、まゆみと圭一は、目的地に到達していた。
2人の目の前には白羽市の巨人が佇んでいる。
巨人の周辺は黒い柵で覆われていて、その更に外側は公園になっている。正式な名称は無味乾燥な白羽市西市民公園というものだが、誰もこの名前では呼ばず、みんな巨人広場と呼んでいるのだった。
「やっほー、キュウちゃん。元気だったーっ?」
まゆみは元気に片手を上げた。キュウちゃんと呼ばれた巨人には、もちろん何の反応もない。
「愛想が悪いなぁ、お前もなんか言えよ」
これは圭一。そして彼も巨人に向かって呼びかけていた。
巨人と会話らしきものをしている2人を、通行人が奇異なものを見る目で通り過ぎていく。
「はぁーっ、今日も駄目かぁ」
肩を落とすまゆみ。
「いつものことじゃねえか。前に、コイツが返事をしてくれたことがあるんだって?」
「そー」
巨人の顔。目も鼻も口もない顔を見上げて、まゆみは答えた。
「といっても、一度だけなんだけどね。あたしが7歳のときに、父さん母さんと一緒にここに来たときなんだけど」
巨人が出現したその日、白羽市は大混乱だった。
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