奪い、たい。

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腰を進めると晴人を咥えるほどの緩みを有していなかった筈の肉環が先端を受け入れる。内部(ナカ)へ誘うようにゆったりとうねる。 「でも、準備、がっ」 「ちゃんと始末してやる」 「でも、」 「すまん、無理だ。」  待てない。貪りたい。縛り付けたい。 「無理矢理にした日からお前に離れられたら生きていられないと自覚したのは俺の方なんだ。」  楔に触れた肉が戦慄く。戦慄きながら、俺を受け入れる。 「お前には酷かもしれないが、俺はお前に依存されたい。凭れ掛かられたい。」 「ひぅっ」  ガリと音を立てて乳首を噛む。腰が跳ねた拍子に含ませただけのモノが離れる。  腰を引き寄せて再び、肉環に埋める。 「俺から離れるな。」  一史の匂いがする。鼻を擦り寄せた胸から、俺を受け入れるために潤んだ後腔から、堪えず啜り泣く屹立から。全身から甘く濃密な匂いがする。目眩すら齎すような香りに正気を保てなくなりそうだ。 「離れないと、言え」  ぐらぐらと頭が揺れる。ゆだる。早く犯したい。息を殺して返事を待つ。初めて侵したときと同じ言葉。イエスしか用意されていなかった選択肢に幅をつける。  イエス以外はない。  実質1択の答えを、自身を押し付けながら問う。  あの時は首を絞められる息苦しさに蒙昧としながら頷いたのだろうか。それとも頷いたように見えただけなのだろうか。あるいは。 「お前が離れないというのなら、俺もお前を離さない。」 「……嫌だって、言ったら?」 「それでも離してなんかやらない。」  そんな言葉は用意されていない。俺を好きだといった以上離れないし、離してなんかやらない。元来自分は物に頓着しないほうだ。寝食に対してですら、その嫌いがある。だが、一度執着したものに対しては強欲である自信がある。失えば自分を壊すほどに、強欲で依存する質である自信が。 「閉じ込めてでも、俺につなぎとめる。」 「う、あ」  押し付けた一物が肉に埋まる。微かな抵抗があったように感じたが、直に、呼吸するようにゆっくりと、一史は晴人を受け入れる。 「ア、ア、あ……」 「離すなって、言えよ。」  ゆったりと腰を進めながら、先刻とは言っていることが違うと思う。どちらにしても、離れてやらない。離れることなど、どだい無理なのだ。あんな酷いことをしておいて、離れられて当然だと思っておいて、出て行かれたかもしれないと考えただけで憔悴しきった自分を、中学生(ガキ)みたいなデートを仕組んだ俺を、一史は初め、体が好きだといった。今は、たぶん、俺自身を好きだといった。
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