奪い、たい。

7/7
前へ
/105ページ
次へ
 好きなら、体以外を求めてくれたっていいだろう。  俺に期待して、依存してくれたっていいだろう。 「離さないでくれって。」 「ア、」  言って欲しい。その掠れた声で。縋り付いて懇願して欲しい。  じわじわと腰を進める。先端にしこりが当たる場所で腰を止めると一史の体がうねった。 「なぁ、言って。」  上目に見上げる。潤んだ目。跳ね上がった前髪が一史を幼く見せた。  下唇が丸め込まれて皺がよる。眉が潜められて苦しげになる。たっぷり濡れた睫毛が伏せされて一度瞬く。  水をしっかりと含んだ瞳が開かれ、唇が解ける。 「はなさ、ないで」  たどたどしく、唇は言葉を作る。作って、口を閉じる。閉ざされた唇は堪らなくなったように再び、開く。 「離さないでください。」  溢れるようにこぼされた切実な願い。両掌が、晴人の頬を包んで視線を合わせる。 「ああ。」  掠れた艶っぽい声に恍惚する。この声が俺を求めるなら幾らだって与えてやろう。幾らでも縛り付けてやろう。許しを得た思いでその腰を掻き抱き、更に奥へ楔を打ち込む。腹の下で一史のものが、脈打った。 「ひっア!」  背を反らした一史の目が見開かれている。焦点があっていない。晴人を締め付ける肉が急激にキツくなり、気をやりそうになって腹に力を込めた。全部突っ込んでないのに、イきそうになった。 「あ、はる、さん、はると、さん」  息を整えながら体を離すと一史は不安げに何度も俺を呼ぶ。それが愛おしくて愛おしくて、その頭を撫でた。  汗やらなにやらで汚れたシャツを脱ぐと一史は息を飲んで、纏められたままの両腕が俺を求めるから、その輪の中に頭を突っ込む。その小範囲は身動きが取りにくく、どちらが捕らわれているのか判らなくなる。 「あ。」 「なんだ。」 「いえ、」  何でもありませんと呟いて、俺の胸に額を擦り付けた。そのまま、動きが止まる。一史の額が触れたところから、汗に湿った肌の心地よい吸い付きと、自分の鼓動を感じる。 「うぁあっ」  自分の心音の高鳴りに意識が移ってしまい、気恥ずかしさが込み上げて、そのまま、一史の体を抱え身を起こす。晴人の股座に乗り上がった体を不格好な足で支え、一史が俺を見下ろす。 「離さねぇよ。」 「ンっ」  目の前の乳首が腫れている。俺が弄りすぎたせいだ。吐息がかかって、一史は身をくねらせる。腰を掴んで俺の上に下ろそうとする。 「これ、これっ!奥っ、」 「ああ、奥までくれよ」  前歯に引っ掻け、舌で転がす。一史の腰が揺れる。 「お前も欲しい、だろ?」  口に含んだ乳首を摘まんで引っ張る。膝が震えている。 「アアっ」  返事を待たずに突き上げるとしなやかな背中が仰け反った。
/105ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2195人が本棚に入れています
本棚に追加