100人が本棚に入れています
本棚に追加
蓮にとって、一葉の行動は、予想外だった。
まさか、里親になることを頭から否定した一葉が、率先して大河内に話を聞きに行っていたとか、びっくりするしかない。
「…私は、別に反対だなんて言ってないわ。ただ、いきなりな話だったから、驚いたし、どうしていいかわからなかったのよ。
大河内さんに相談して、私の気持ちに整理が着いたの。いけない?」
「…本当に、君は。」
蓮は、苦笑いするしかなかった。
しばらくして、二人は、大河内に色々教えてもらいながら、里親になる準備を始めた。
里親として持ってなければならない知識や心構えなんかを学んで、次のステップへ進む。
その日は、大河内と一緒に、養護施設へ見学に行くことになった。
そこには、小さな子供達が、思い思いに遊んでいた。
「…大きな子達は、今、学校ですね。ここは、今、高校生がいないので、一番年上は、中学生です。」
「そんな大きな子もいるですね。」
「施設の規模や目的によって年齢の規定はありますが、大抵の施設は、18歳までいられますよ。」
「18歳になったら?」
「施設を出て自立します。」
「…働ける年齢だからですか。」
「まあ、それもありますね。」
そんな話を聞いていた時だ…。
「あの子は、学校お休みですか?」
一葉の質問に、施設長が答えた。
「ああ、茉里菜ですか。あの子は不登校なんですよ。」
ひとりの女の子の周りに、小さな子供達が集まって、本を読んでもらっていた。
優しい笑顔のその子の顔に、蓮は、ハッとなった。
「…あの娘。」
「どうしたの、蓮?」
「あの娘、この間話した女の子だよ。」
「この間?…もしかして、あの夜の娘?」
「…間違いないと思うんだけど。」
それは、運命的な出会いとしか言いようがなかった。
最初のコメントを投稿しよう!