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「…もしかして、前に、私が遊びませんかって、声掛けた叔父さん?」
「そうだよ。やっと思い出してくれたんだ。つれないなぁ。」
そう言って蓮は、けらけらと笑ったのだが、今のやり取りで、眉を曇らせたのは、神林だった。神林は、施設長から経緯を聞いてなかったのかもしれない。
「どう言うことだ、茉里菜。」
「この叔父さんの言う通りよ。あの日、私、むしゃくしゃして、もう陽だまり園には帰らないつもりで出てきたの。
同じくらいの歳の女の子達が、声掛けてきたから、しばらく一緒にいたの。
その子達、みんなスマホ持ってて、何かやってた。その内、一人二人っていなくなったの。だから、まだ残っていた子に、みんなどこへ行ったのって聞いたら、みんな神待ちしてたんだけど、神様が現れたから、そこへ行ったんだって…。
私、スマホも持ってないし、神待ちとか、聞いたこともないし…。
そうしたら、私にみんなのこと教えてくれた子が言うの。
『あなたは、親に大事にされてる箱入り娘で世間知らずね。家出てくるのなら、それなりの覚悟がいるのよ。あなたみたいな子は、あっという間に、お金を巻き上げられて、ぼろ雑巾みたいに使い捨てられて終わりね。』
私は、お父さんにもお母さんにも、捨てられたんだよ。大事になんてしてもらってないし、お嬢様でもないよ。
スマホ持ってないのだって、園で、余分なお金を使えないからで、高校入るまで、許してもらえないの、私、知ってるもん。
何も知らないのに、知ったかぶりした言い方、腹が立ったから、私、ひとりでなんとかしようって思って…。」
「なるほど、それで、その子達から離れて、俺に声を掛けてはみたが、お説教喰らって、追い返されたと。」
「そうだよ!私が、馬鹿なの!世間知らずのくせして、なんでも知ってる、なんでも出来るって、思った私が、馬鹿なんだから…。」
「俺の言った意味がわかったから、すぐに園に帰ったんだろう。」
「しょうがないじゃない…。帰らなきゃ…。」
茉里菜は、ちょっと、しゅんとしてしまった。
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