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「茉里菜ちゃん。紅茶なら飲めるかしら?」
一葉が、茉里菜の前に、紅茶の入ったカップを置いた。
「…ありがとうございます。」
「茉里菜ちゃんは、ちゃんと礼儀が身に付いてるのね。良いことだわ。
そんな茉里菜ちゃんに、神待ちのこと教えてあげるわね。
あなたは、あんなのやらなくてよかったのよ。もし、好奇心と言う名の誘惑に乗って、他の子達と同じことしてたら、あなたは、それこそ、どこにも帰れなくなっていたわ。」
「…どこにも帰れない?」
「そうよ。あのね、神待ちって言うのはね、家出した子が、無条件で衣食住を提供してくれる人を待ってることなの。
ウェブの掲示板に、書き込みしとくと、家に泊まればいいよって、返事をしてくる人達がいるのよ。家出してきた子達にしてみれば、天の助けだから、提案してくれた人のことを“神様”って呼んでるの。
もちろん、本当に親切心で声を掛けて助けてくれる人もいるのよ。でも、すべての人がそうとは限らないの。
泊まるための部屋も、ご飯も用意してくれるし、時には欲しいっていうものをいろいろ買ってくれたり、家出した子にとったら、本当に神様よ。
でも、中には…というより、大多数の神様は、煩悩まみれの堕ちた神様。
掛かった費用を払えとは言わないし、むしろ、そんなものいらないって言うの。
でも、その代償として君の体を差し出しなよって言われるのよ。意味わかるわよね?」
「…それって…あの…男の人と…するってことですよね…。」
「そうよ。金銭のやり取りがないだけで、形を変えた援助交際に変わりないわ。だから、やらなくて正解。
でも、その後に、蓮に遊ぼうなんて声掛けたのは、いただけないわ。結局、神待ちしていた子達と同じのことを、あなたは、しようとしていたのよ。
相手が、蓮でよかったわね。私達は、ここで、長く生活してるから、裏も表も知ってるの。あなたみたいな年頃の女の子が、沢山泣いてるのを見てきたの。だからね、あなた一人でも、救えてよかったって、私達思っているのよ。」
一葉の言葉は、茉里菜の心にグッと刺さっていた。
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